03. どんな褒美を与えればお前はここに留まるんだ
「君が裏切り者か、キラ・ヤマト!」
城は内側から陥落しつつあった。あちこちで怒号が聞こえ、放たれた火と煙が勢いを増していく。
警護の兵士を切り捨て寝室に入ってきたキラに、皇帝が引き攣った顔で剣を向ける。だが、武芸においてキラに勝てないことは明白だった。
「貴方はここで終わりです、閣下」
数多の兵を屠った長剣を構え、キラが一歩を踏み出す。同じだけ後ろに下がりながら、皇帝は口の端に笑みを作った。
「まだ終わらぬさ。君がいれば!」
「僕は貴方を裏切ったんですよ?」
構わんよそんなことは、と皇帝は利己的な表情を浮かべて剣を持たない左手をキラに差し伸べる。
「君さえいれば私の国はこの戦を乗り越えることができる。そして、この国は君の国より広い国土も、強い力も、多くの金も持っている。どうかね?」
黙っているキラに脈ありと踏んだように見せかけ、皇帝は声を強めてキラを促す。
本気でキラが寝返るとは思っていない。余裕を装い時間を稼ぐのは、レイがこちらに向かっている筈だからだ。この城は落ちるだろうが、生き延びればいくらでも機会はある。
それに、キラを欲しいという言葉は決して嘘ではなかった。
「何が欲しい?如何なる望みも私は聞こう。どうか私の部下になってくれないか」
レイはまだ現れない。
窓越しの炎に照らされた赤い闇の下、キラはいつもの微笑みとともに静かに首を振る。
「いいえ。どんなに素晴らしい褒美を与えられようとも、貴方に仕えることはできません」
「キラ。そろそろ時間ですわ」
突然、戦場に似つかわしくない清らかな声が割り込み、桜色の長い髪を結い上げた女性が部屋へ入ってきた。
「お久しぶりですね、皇帝閣下」
「ラクス・クライン…君まで来ていたのか…」
———どうもこれまでらしい。皇帝は諦めの苦笑を浮かべ、剣を振り上げるキラの言葉を聞いた。
「僕の主は、国王陛下だけですから」
オレンジいのは名前出てきませんがデュランダル議長です。
キラは隣国で間者をしてたのでした。